民法改正!賃貸借契約にどう影響するのか?!2
今回は、平成29年6月2日に公付された民法の一部を改正する法律が、賃貸借契約に与える影響について、引き続きご紹介します。
民法改正が不動産賃貸借に与える影響を、保証債務に注目してみてみよう
企業や消費者の契約ルールを定めるいわゆる債権法に関する民法改正案が国会で可決され、平成29年6月2日法律44号 民法の一部を改正する法律が公布されました。
施行日は「公布の日から起算して3年以内の政令で定める日」ですので、平成32年6月2日午前0時までに施行されることになります。
今回は特に、「保証債務」に関連する部分を抜粋してご紹介します。
保証債務に関連する改正ポイント3つ
保証債務に関して改正されたポイントは3つあります。
1つめが、連帯保証人について極度額の設定が義務付けられた点です。
2つめは、連帯保証人への情報提供義務について新設された点、そして最後は連帯保証人からの問合わせに対する回答義務が新設された点になります。
この3点について、これから詳しく見ていきます。
連帯保証人について極度額の設定が義務付けられた点
今回の民法改正により、不動産賃貸借契約において連帯保証人を付けるときは、「必ず契約締結時に極度額(連帯保証人の責任限度額)を定めなければならない」ということになります。
また極度額を定めていない連帯保証条項は無効とされます。
しかしそこで課題となる点は、極度額は「いったいどのくらいの額に設定するのか?」ということになります。
しかし極度額の設定については、法律上には特にルールは定められていません。
賃貸人と連帯保証人の合意により、金額を自由に設定することになります。
貸主側の立場から考えると極度額は連帯保証人への請求限度額となるため、なるべく高く設定しておきたいところです。
特に、滞納者(賃借人)が滞納後も退去せず、裁判を起こして退去させなければならない最悪のケースでは、滞納発生から明け渡しまで1年半くらいかかる場合があります。
その他、原状回復費用も連帯保証人に請求することを考えるとかなり高額な設定になる可能性があります。
一方で、極度額が高額になりすぎると、連帯保証人が尻込みし、連帯保証に応じないということも考えられます。
そのため、どのラインで極度額を設定するかということが賃貸不動産の経営にとって重要な課題となります。
連帯保証人への情報提供義務について新設された点
民法改正により、事業用賃貸借(店舗やオフィスなど)については、賃借人から連帯保証人に賃借人の財産状況などを情報提供することが義務付けられます。
そして、賃借人が連帯保証人に情報提供をせず、連帯保証人が賃借人の財産状況等を誤解して、連帯保証人になることを承諾した場合に、
賃貸人が賃借人による連帯保証人に対する情報提供義務を果たしていないことについて知っていた、
あるいは知らないことに過失があった場合は、
連帯保証人は連帯保証契約を取り消すことができるとされています。(改正民法465条の10)
賃借人から連帯保証人への情報提供が義務付けられた項目
- ①賃借人の財産状況
- ②賃借人の収支状況
- ③賃借人が賃貸借契約の他に負担している債務の有無 並びにその額
- ④賃借人が賃貸借契約の他に負担している 債務がある場合、その支払状況
- ⑤ 賃借人が家主に保証金などの担保を提供するときは その事実および担保提供の内容
連帯保証人からの問合わせに対する回答義務が新設された点
賃貸人は連帯保証人から賃借人による家賃の支払状況について問い合わせを受けたときは、遅滞なく回答することが義務付けられます。(改正民法458 条の2)
回答をしない場合、賃貸人から連帯保証人に賃借人の滞納家賃等を請求する場面で、連帯保証人から回答義務違反を指摘されて、請求に支障が生じることも考えられます。
まとめ
民法改正により連帯保証人に極度額を設定することが必要となります。
これにより賃借人は連帯保証人に自分の財産状況等の情報提供をすることが義務付けられますが、賃借人がこれに抵抗を示し、連帯保証人を付けることを嫌がるケースが想定されます。
そのため賃貸人が、連帯保証人を付す契約ではなく、家賃保証会社を利用する契約を選択しテナント募集をするケースが増えることが考えられます。
なぜなら、民法改正では法人を保証人にするケースについては、極度額設定義務も賃借人から連帯保証人への情報提供義務も適用されないと定められているからです。
民法改正後の事業用賃貸借(店舗やオフィスなど)については、家賃保証会社を利用する契約も想定して置く必要となるかもしれません。
法人の賃貸借契約では適用外という結果でしたが、個人の賃貸借契約には役立つ知識ですので参考にしてください。
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